CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)、通称クリスタには、アナログ原稿を読み込んだ際に写ってしまう不要な点や線を簡単に消去するための「ごみ取りツール」が搭載されています。このツールは、イラストや漫画制作において非常に便利な機能の一つです。
ごみ取りツールは、ツールパレットの「線修正」ツールを選択し、サブツールから「ごみ取り」を選ぶことでアクセスできます。また、キーボードショートカット「Y」キーを押すことでも素早く選択することができます。
このツールの最大の特徴は、指定した範囲内にある小さな点や短い線を自動的に検出して消去してくれることです。手作業で一つ一つ消していく手間を大幅に削減できるため、作業効率が格段に向上します。
ごみ取りツールには以下の3つのサブツールがあります。
これらのサブツールは状況に応じて使い分けることで、より効率的なごみ取り作業が可能になります。
クリスタのごみ取りツールを効果的に使うためには、適切な設定が重要です。ツールプロパティパレットでは、ごみ取りに関する様々な設定を調整することができます。
まず重要なのが「モード」設定です。モードには主に以下の3種類があります。
多くの場合、アナログ原稿のごみ取りをする際は「白地の中の点を消す」モードを選択する必要があります。初期設定では「不透明の点を消す」になっていることが多いため、ごみ取りがうまく機能しない原因となっています。
次に重要な設定は「ごみサイズ」です。これは消去するごみの大きさを指定するもので、数値が大きいほど大きなごみも消去対象となります。ただし、数値を大きくしすぎると線画の一部まで消えてしまう可能性があるため、適切な値を設定することが重要です。
また、「図形」設定では、ごみ取りを行う範囲の指定方法を変更できます。長方形や楕円形、フリーハンドなど、状況に応じて使いやすい形を選択しましょう。
クリスタのごみ取りツールを使用しても、思うようにごみが消えないことがあります。そんな時の主な原因と対処法を紹介します。
1. モード設定の問題
最も多い原因は、前述したモード設定が適切でないことです。アナログ原稿の白い背景上のごみを消したい場合は、ツールプロパティの「モード」を「白地の中の点を消す」に変更してください。初期設定の「不透明の点を消す」では、白地のごみは消えません。
2. レイヤーの種類が適切でない
ごみ取りツールは基本的に「ラスターレイヤー」でのみ機能します。読み込んだ画像が「画像レイヤー」として取り込まれている場合、ごみ取りツールが使えません。この場合、以下の手順でラスターレイヤーに変換する必要があります。
3. ごみサイズの設定が適切でない
ツールプロパティの「ごみサイズ」の設定値が小さすぎると、大きめのごみが消えないことがあります。逆に大きすぎると、線画の一部まで消えてしまう可能性があります。実際のごみのサイズに合わせて適切な値を設定しましょう。
4. ベクターレイヤーでの使用
ベクターレイヤーではごみ取りツールの「ごみ取り」と「塗り残し埋め」は使用できません。ベクターレイヤーでごみを取りたい場合は、「ごみ選択」ツールを使用するか、別の方法を検討する必要があります。
これらの対処法を試しても問題が解決しない場合は、レイヤーの設定や他のツールの干渉などが考えられます。一度作業を保存してクリスタを再起動してみるのも効果的かもしれません。
クリスタには「ごみ取りツール」の他に、「ごみ取りフィルター」という機能も用意されています。このフィルターを使うと、レイヤー全体やキャンバス全体のごみを一括で処理することができ、より効率的に作業を進めることができます。
ごみ取りフィルターを使用するには、上部メニューから「フィルター」→「ごみ取り」を選択します。すると、ごみ取りの詳細設定ダイアログが表示されます。
このフィルターの特徴は、以下の点にあります。
特に大きなキャンバスや複雑なイラストの場合、ごみ取りツールで一つ一つ範囲指定するよりも、フィルターを使用する方が効率的です。ただし、フィルターは一括処理のため、細かい調整が難しい場合もあります。
効率的な作業フローとしては、まずごみ取りフィルターで全体的なごみを除去し、その後、残ったごみや細かい部分をごみ取りツールで個別に処理するという方法がおすすめです。
また、作業前にレイヤーを複製しておくと、万が一フィルターの効果が強すぎて線画の一部が消えてしまった場合でも、元に戻すことができるので安心です。
クリスタのごみ取り機能をさらに効率的に使いこなすためには、外部デバイスとの組み合わせも有効な手段です。特に、ショートカットキーを割り当てられる専用デバイスを活用することで、作業スピードを大幅に向上させることができます。
例えば、TourBoxのような左手デバイスを使用すると、ごみ取りツールの呼び出しやモード切替、ごみサイズの調整などを直感的に操作できるようになります。通常、これらの操作はマウスでツールパレットやプロパティパネルを操作する必要がありますが、専用デバイスを使えば片手でスムーズに行えます。
TourBoxの場合、以下のような設定が可能です。
また、タブレットのショートカットボタンにごみ取り関連の機能を割り当てることも効果的です。例えば、Wacomタブレットのエクスプレスキーに「ごみ取りツール」「ごみ取りフィルター」「モード切替」などを設定しておくと、ペンを持ち替えることなく操作できます。
これらの外部デバイスを活用することで、クリスタのごみ取り作業がより直感的かつスピーディーになります。特に長時間の作業や大量の原稿を処理する場合には、作業効率の向上が体感できるでしょう。
TourBoxとクリスタのごみ取りツールの連携について詳しく解説されています
プロのイラストレーターや漫画家は、クリスタのごみ取り機能を単なるごみ除去だけでなく、様々な創造的な用途にも活用しています。ここでは、一歩進んだごみ取りの応用テクニックを紹介します。
1. 効果表現のための活用
「透明の穴を周囲の色で埋める」モードを使うと、意図的に作った小さな穴や点を自然に埋めることができます。これを利用して、以下のような効果表現が可能です。
2. レイヤー分けと組み合わせた高度な編集
ごみ取りツールは、レイヤー分けと組み合わせることでより高度な編集が可能になります。
3. バッチ処理での活用
大量の原稿を処理する場合、クリスタの「バッチ処理」機能とごみ取りフィルターを組み合わせることで、複数のファイルに一括でごみ取り処理を適用できます。これは連載漫画や商業イラストなど、締め切りの厳しい作業で特に重宝します。
4. 下書きクリーンアップへの応用
ごみ取りツールは、下書きのクリーンアップにも効果的です。特に「ごみ選択」ツールを使って不要な線や点を選択し、一括で削除することで、きれいな下書きに仕上げることができます。
5. 印刷用データの最終調整
印刷用のデータを作成する際、最終チェックとしてごみ取りフィルターを軽く適用することで、見落としていた小さなごみを除去できます。ただし、線画の細部が消えないよう、プレビューで確認しながら慎重に行うことが重要です。
これらの応用テクニックを習得することで、クリスタのごみ取り機能をより創造的かつ効率的に活用することができます。プロの作業フローを参考に、自分のスタイルに合った使い方を見つけてみてください。
クリスタには、ごみ取りツール以外にも様々な修正ツールが用意されています。効率的な作業のためには、これらのツールを状況に応じて適切に使い分けることが重要です。
1. 消しゴムツールとの使い分け
通常の消しゴムツールは手動で消したい部分をなぞる必要がありますが、ごみ取りツールは指定した範囲内の小さな点や線を自動的に検出して消去します。
2. 修正液ツールとの使い分け
修正液ツールは、白い背景上に白色で塗りつぶすツールです。
3. 線修正ツールとの連携
線修正ツールには、ごみ取り以外にも「線幅修正」「線の接続」などの機能があります。
これらを連携して使うことで、より効率的な線画の修正が可能になります。
4. フィルター機能との組み合わせ
クリスタには、ごみ取りフィルター以外にも様々なフィルターがあります。